スポットワーク市場拡大と背景

スポットワークとは労働者が継続した雇用関係がなく、自分の働きたい時間帯に合わせて単発の仕事をする働き方
です。労働者側は自分の空き時間を使って、賃金を稼ぐことができ、企業側は突発的な欠員対応や繁忙期のみ雇用す
ることによって、人件費や福利厚生のコストを抑えられるメリットがあります。スポットワークには雇用契約を結ばずに
業務委託契約を結んで業務を行う「ギグワーク」（デリバリー配達員など）と企業と短期雇用契約を結ぶ「単発バイト（
スキマバイト）」の2種類があります。

本ブログでは「単発バイト（スキマバイト）」について分析を紹介します。

スポットワークの市場規模

スポットワーク仲介企業で構成しているスポットワーク協会によると、2024年5月末時点のスポットワーク登録者数
は約2,200万人で2023年3月末時点（990万人）と比べて、2.2倍となりました。労働市場の調査を手掛けているツナ
グ働き方研究所によると、2024年3月の新規求人は8万3,015件（前年比17.8％増）の実績で、2023年6月から10ヶ
月連続で前月を上回っています。

従来の働き方との違い

従来の短期間労働形態はパートタイム・アルバイトが一般的でしたが、それとの大きな違いは「その気軽さ」と言え
ます。履歴書や面接が不要で数時間や1日だけという働き方で、その職場が気に入らなければ、次に応募しない、気
に入ればまた応募すればよいと言う、労働環境や就業場所を選ぶ自由度が高いのも需要が高まっている大きな要
因です。アルバイトやパートタイムで継続的に働くことが難しかった方もスポットワーカーとして働けるのです。

企業が求めるスポットワーカーのスキル

働く職場や仕事内容を柔軟に選択できるスポットワーカーに求められる資質は、新しい職場に対応する柔軟性と新
しいことを学ぼうとする積極性です。スポットワーカーから新たなスキルを習得して、キャリアアップしていくケースも
あります。スキマバイトの大手シェアフルによると、自分に合う良い仕事が見つかれば、直接雇用や契約社員・正社員
とキャリアアップしたいという答えが全体の50％を超えていたという調査結果もあります。各プラットホーム側もそ
のことを推奨しているのが現実で、深刻な人員不足に陥っている企業側もスポットワーカーのキャリアアップによる
良い人材の確保が大きな目的のひとつになっています。このように、キャリアパスの入り口としてスポットワーカーと
して働く活用方法も可能なのです。一方でスポットワークは若者だけでなくシニア層の利用も急増しています。「短時
間・1日限定」のスポットワークを利用する高齢者が増えている要因は「体調に合わせた仕事を選べること」、「社会
とのかかわりを維持できること」、「自分が知らなかった仕事を体験できること」などがあげられます。企業側として
も人生経験が豊富なシニア層の仕事に対する安定感は、貴重な人材として捉えているのです。

スポットワークの課題

冒頭でスポットワークを活用するメリットを述べましたが、同時にデメリットも存在します。

①当日キャンセル

スポットワーカーは企業との繋がりが薄いため、当日にキャンセルや無断欠勤するケースも散見 され、その
場合は現場に混乱が生じます。

②人材の見極めができない

スポットワーカーは面接などが行われずに採用されることを前提としていますので、 その人材が持つスキルや
業務レベルの見極めはできません。当日に人柄などが分かるのでミスマッチが生じる可 能性があります。加え
て、独自のノウハウや機密情報の流出には十分に注意が必要です。ノウハウや機密情報を扱う 際には外部の会
社に依頼する場合と同様の意識を持つ必要があります。企業はスポットワーカーを活用する場合に は、そのデ
メリットを理解し、場合によっては運営に支障をきたす場合もあると事前に認識しておくべきだと考えます。

スポットワークの今後

少子高齢化の進行で労働人口は下げ止まる気配はなく、必然的に企業のスポットワーカーに対する需要は増える
と考えられます。また、デジタルプラットフォームの発展で利便性が高まり、スポットワーカーと企業のマッチングがよ
り効率的に行われるようになる事が予測されます。企業側の需要拡大にともなって、スポットワーカーの人数は増え
ると予測します。しかし、スポットワーカーの中身については、現在の売り手市場の状況から正社員に転身する若手や、
実質賃金の向上でスポットワークから撤退する会社員が増え、代わって元気なシニア層がスポットワーカーの中心に
なる可能性は高いと予測します。